今回は「変化」というテーマで、ここ5年間墓石数量の推移、消費者の意識変化、エンドユーザーの理解を求めることを発表し、中国側の企業からも環境規制を含む生産経営状況を報告しました。 石材交流会を通じて、 中日石材業界さらなる理解を深める旨で、厳しい現状を乗り越える意見も提案されました。( 交流会の内容は下記の通り添付致します。)
福建省墓石輸出業界 2018 年 1 月~10 月生産経営調査報告書
福建省石材協会墓石専門委員会は、2018 年 10 月頃、福建省墓石生産企業全般に渡って、調査致しました。その結果をご報告いたします。
一、生産経営の基本状況
1、地域別統計
地域分布:日本への墓石輸出工場は福建省全体的に減りつつあります、2018 年 10 月 31 日まで(貿易会社を除く)恵安に 82 軒、康美と羅東に 36 軒、石井に 15 軒、アモイ地区(同安と集美) に 5 軒、漳州地区(漳浦、長泰、角美)に 8 軒、福州に 2 軒、全部で 148 軒。2017 年 12 月 31 日の 173 軒(訂正した軒数)に対して、25 軒減少しています。
2、輸出状況
日本へ墓石の輸出量は 2017 年より大幅に減少、アモイ通関統計によると、2018 年 1 月~9 月日本輸出石材及び石材製品の量について、2017 年同期より 41.06%減少;通関関税番号 931100 墓石石刻品について、2017 年の同期より 57.11%減少;
3、工場経営状況
恵安地区には日本墓石の生産工場は僅か 82 軒です。全体的に不景気です。一部の工場を除く、生産量が 6 割しか占めていない工場は大多数です。稼働しない時間が多くなってきました。それによって、コストが高くなって、利益が大分薄くなっています。
2018 年日本墓石工場の経営を断念する工場は計 13 軒あります。一部の工場は国内墓石や、ヨーロッパ墓石市場に転じ、一部の工場を借出するなど、生き残るよう必死な状況です。
康美地区に 36 軒の生産工場があります。現地政府の環境規制の管理は緩く、環境改善への投資は少ない金額ですむ為、コストを抑えられ、値段の設定に有利で、注文が比較的に多いですが、 去年より少ないです。品質より値段で勝負するのは康美地区の特徴です、利益はそれほど多くあ りません、2018 年、計 6 軒の工場が閉鎖になっています。
G623 等外柵の専門生産工場について、アモイ翔安、海倉の工場は環境規制の為、生産停止処分しました。石井、角美、漳浦等 2017 年に比べると、あまり変わりません。
4、研磨の従業員不足問題、自動化の普及は難航
現状、従業員不足問題について、研磨の従業員は一番深刻です。原因としては 40 歳以下の従業員は極めて少ない;国内墓石工場や建築材工場へ転職する人が多い。日本の墓石生産工場は要求 が厳しく、給料面も全体的に低い為、ベテランの従業員は仕事を辞めていきます。
自動研磨機械は理想の解決方法ですが、現実的に普及するのは難しい。その原因:市場は低迷で、 工場として多額な資金を投入するのは困難であります;自動研磨機械は人間の代わりに効率がい いかもしれないが、回収率が悪い為、自動研磨機械を採用される工場はまだ見えていません。自 動研磨機械を普及するのはまだまだ先だと思います。
5、悪性競争で品質が低下
日本の墓石の注文は年々少なくなっています。悪性価格競争の為、より厳しくなっています。日 本の卸業者であれ、中国の企業であれ、手っ取り早く注文を取る方法は、値下がりして注文を取 ることです。「さらなる低価格化」を進む中で、工場側は無理してお客様の低価格に合わせるよ う、石をごまかしたり、加工プロセスを省いたりして、品質がどんどん酷くなっています。高品 質を守る為にはそれなりのコストがかかります。悪性価格競争のせいで、高品質を守るのは 先ずありえない話です。多くの工場は価格を抑える為、低品質のものを作ってしまい、クレームが 絶えません。
6、為替の変動が激しい
ドル対人民元の為替は年始の 6.25 から 6.90 に変わって、変動率は 10%を超えています。為替の変動で、値段への影響が大きい。当初の見積単価を維持する為、貿易会社から工場側への協力 を強要して、工場にとって大きな負担になります。
7、未払い事例が多発
今年に入ってから、貿易会社からお客様が無断で支払わないケースが増えてきたという声があり ました、そして工場の方からも貿易会社のお支払いについて問題があるという情報をいただきま した。そこで、工場側は資金がうまく回らないことで、業界全体に悪影響を与えてしまいます。
二、政府による是正処理状況
今年、政府による改善措置是正について、さらに厳しくなってきました。2017年、蒲田と泉州台投区にある石材生産工場に対して、すべて閉鎖を命じました、その続き、今年アモイ海倉にある石材生産工場もすべて閉鎖命令がありました。同安、集美、翔安集中工業区以外の工場に関し て、閉鎖命令がありました。漳州、福州、南安でも環境問題に引っかかって閉鎖せざるを得ない 工場もたくさんあります。
恵安は石材生産工場の集中地域であって、恵安県の政府は工場環境の改善に力を入れて、規制は厳しくなっています。環境面において、消音ブレード、粉塵処理設備、作業地硬化、固体廃棄物 密封保管場所、雨水汚水分離設備、作業場空間隔離、環境定期的点検等;安全面において、特殊 設備、リフト等の定期的点検、従業員健康診断、特殊作業に必要な許可証、防塵マスク、安全衛 生定期検査等。
7 月 30 日まで恵安県では環境問題で閉鎖した工場の数は 547 軒で、第一弾の環境問題審査に応募した工場軒数は 167 軒で、工場全体は環境改善に投資した金額は 7109 万元でした、一軒あたり 42.6 万元の計算になります。結局、環境審査に合格し許可したのは 130 軒です、第 2 弾環境改善の工場の数は未定です。第 1 弾より厳しいそうです。最終的に恵安県に残っている生産工場の数は 400 軒ぐらいと予想しています。
政府は安全性や環境問題について段々厳しくなって、工場としては政府の基準に達するよう、資 金投入して工場の作業環境の改善をしないといけない状況になっています。設備稼働経費やメン テナンス費用に関しても大きな負担になっています、工場の消費電力は年に 25%位増加しています。
三、日中石材業界の発展について、下記のように提案します。
1、日中双方はお互いに安定した供給関係を作ること
生産工場と従業員の数は減っている中、現状は段々厳しくなってきています。この厳しい時期こ そ、お互いに安定した関係を重視して、ウィンウィン関係を築くよう努めます。
2、高品質を保つようお互い協力し合い
品質は生き残る為の基本となります。品質こそ未来につながります。安い単価ばかりを追求した ら、品質の重要性は薄くなります。品質を前提として、お互いに合理的な利益を保つ以上、健康 的に経営につながるし、さらに良いものを提供でき、好循環になります。
3、為替リスクの配慮
国際貿易の仕事を携わる以上、為替のリスクを十分理解しているはずです。人民元の変動率は 5~8%になっています。企業としては少なくとも 5%の余裕をもって為替リスク対策とすることです。
4、日中石材業界の全体は環境と安全性を重視すること
生産工場は環境と安全性をよく保ち、健康で環境にやさしい作業環境に努めるべきです。日本の 石材会社と貿易会社はそうでない工場から仕入れるのは断然にやめていただきますようお願い 申し上げます。
5、支払い条件をルール化にすること
お客様の信用問題で支払わない事例が多くなってきました。その原因で、企業は経営危機に面し ていると言っても過言ではありません。輸出企業は慎重にお客様を選別するべきです。信用保険 を積極的に取り入れて、リスクを回避します。お支払い締め日は出荷後の一ヶ月以内に設定しま す。生産工場も信用性が高い貿易会社を選択すること、同じくお支払い締め日は出荷後の一ヶ月 以内に設定します。支払い条件をルール化にするからこそ、経営上の資金問題の解決になるし、 損失を蒙ることはありません。
6、福建省墓石専門委員会によって定期的に信用問題の警告システム作成
各地域の石材協会によって、情報収集して、該当地域企業から信用問題がありそうなお客様情報 を聞き取り調査して、リストを作ります、それについて調査し検証します。定期的にネットでそ の内容を公表します。できる限りリスクを回避するよう、信用性がある環境を作るよう努めます。
7、交流を深め
日中双方の交流をより一層深めます。中国側はもっと日本の墓石の伝統文化と特徴を研究して、 日本の経済は墓石市場への影響や動向を把握します;日本側は中国の墓石工場の現状と問題点を 理解してほしい。お互いによくわかった上で、互恵関係を築き、さらなる発展するよう協力して、 頑張りましょう。
一般社団法人 日本石材産業協会 輸入卸商部会長 吉川 信貴
皆様、本日はお忙しい中、中日交流会にご足労頂き誠に有難うございます。さて今回は「変化」というテーマに基づいての発表という事なので、中々近々の具体的なデータの乏しい中、株式会社日本石材工業新聞社様と株式会社鎌倉新書様に貴重なデータをご提供頂き、簡単ではございますがここ5年程度のあいだにおける日本国内の墓石市場の変化について発表させて頂ければと思います。
① ここ数年の死亡者数の推移と予測
まず始めに、我々の産業の将来予測のひとつの根幹の数字となる、日本国内の死亡者数の推移と予測をご覧ください。
過去 11 年 108.4 万(2006)→133.4 万(2017)、約 23%増
以降予測 133.4 万(2017)→152.2 万(2025)→165.9 万(2035)→167.9 万(2040)、ピーク時は現在より約 26%増
一見この数字だけ見れば日本国内における墓石産業は今後優に 20 年は安泰であると思われます。
② ここ 5 年間の輸入量の推移
では次に、皆様も御存じとは思いますが実際の花崗岩製品輸入量と金額の統計を見て行きましょう。
輸入量 724,822t(2013)→461,554t(2017)、約 36.3%減
輸入額($) 80621.24 万ドル(2013)→47201.07 万ドル(2017)、約 41.5%減
実際の数字を見てみると、輸入量にして約 36%、金額にして約 42%落ち込んでいます。金額の落ち込みがより大きいのは、近年安価な材質の製品が増えている傾向と花崗岩製品の中に建築材も含まれる事、さらに為替(円安)の影響も考えられます。それにしても先程の死亡者数と照らし合わせると大きな乖離があると言わざるを得ません。
③ 消費者のお墓に対する意識の変化
先程の減少の要因の主たる原因の一つと考えられます一般消費者の動向を知る上で、ひとつの重要な指針となるデータを見て行きましょう。2011 年から毎年調査を行っておられます鎌倉新書さまの「お墓の消費者全国実態調査」より、いくつかの数字を見てみたいと思います。
こちらのデータは関東の更に都市部の方の回答が多い為に、一概に日本全国の平均的なデータとは言い切れません。しかしながらこの中で需要減少の裏付けとなるデータとしましては、
① 全国平均墓石販売価格の低下、142 万(2013)→114 万(2017)、約 20%減
② 和型と洋型の割合の変化、和型 32%洋型・デザイン墓 54%(2013)→和型 27%洋型・デザイン墓 61%(2015)、
和型と洋型・デザイン墓で比較した場合、和型約 25%減。
④ 購入区画面積の推移、1.89 ㎡(2013)→1.44 ㎡(2015)、約 24%減。が挙げられます。
ここ数年の最も大きな変化としましては、埋葬方法の多様化と少子化によるお墓の承継者不足が挙げられます。先ほど、死亡者数は年々増えているとお伝えしましたが、一方で、子供の生まれる数は年々減少してきています。これにより、これまでの一般的な墓石=家の継承の象徴ともいえるものだったわけですが、お墓の承継者がいなくても埋葬できる供養形態(納骨堂など)への関心が年々高まっているように感じられます。
納骨堂 14%(2013)→樹木葬・散骨・納骨堂 16%(2015)→
樹木葬 24.9%・納骨堂 19.6%・その他 8.8%、合計 53.3%(2017)、
2013 年から約 381%増
2013~2015 年には 1 割強だった納骨堂を含むその他埋葬が、2017 年には全体の 5 割強まで伸びています。価格帯的にも一般の墓所と比較して平均で4~6割と比較的安価で、お墓の改葬のひとつでもある「墓じまい」から始まったお墓離れと埋葬の多様化を背景に一気に一般消費者のニーズを掴んだ事が分かります。
⑤ 「墓じまい」について
ここで「墓じまい」についての説明をさせて頂きたいと思います。
「墓じまい」とはお墓の引越しの一種といえますが、今あるお墓を撤去し、お骨は納骨堂などに納めるようなことを「墓じまい」と呼んでいるケースが多いと思います。このことも日本全国における少子化=お墓の承継者不足が大きな要因になっているように感じます。
このような傾向が最近増えてきていることから、メディアにおいても「墓じまい」というテーマが多々取り上げられるようになり、言葉が存在する事の安心感からか急激にお墓の解体・撤去、他埋葬形態への移行が進んでいる傾向がうかがえます。
お墓の改葬の数(お墓の引っ越し・墓じまい含む)72810 件(2010)→97317 件(2016)、約 1.3 倍。
この数字はおそらく今後も伸びて行くと思われます。
具体的なデータは無いのですが 2011 年の東日本大震災の際、被災地の方は修理は無理でも取りあえず石塔だけは建て上げる方が殆どでした。ところが、今年発生しました大阪府北部地震では、被災したお墓をそのまま撤去してしまう方も多数おられるとの話を伺いました。このような所にも「墓じまい」の影響が表れているようにも感じます。
⑥ 小売店における状況の変化
では今度は、この様な環境の変化にさらされておられます小売店を取り巻く状況を、石材工業新聞社様が毎年小売店を対象に行っていらっしゃいます「墓石市場動向調査」から見て行きたいと思います。この調査は日本の小売石材店約250社(日本の東北・関東・北信越・東海・近畿・中国・九州地区の計 13 県)へのアンケート調査です。
まず売上面ですが、売上が減少したという回答が半数近くを占める中、前年並みという回答が3割、売上が増えたという回答が2割あります。全体的に厳しい状況であることは間違いないのですが、売上を維持していくために努力されている石材店も少なくないことがわかります。
なお、その売上を維持するための内容ですが、アンケート結果からも、新規建墓数の減少を受け、新規墓石以外のリフォームや「墓じまい」の割合が増えて来ている様です。
墓石のタイプに関しては、洋型が増加してきているものの、やはり和型のシェアが多い事が分かります。ただ、ここにはアンケート回答されている石材店の地域性(回答が
13 の県に限られている)もあり、また、日本加工や自社加工の小売店も含まれるため、中国国内のイメージとは多少乖離があるかもしれません。
⑦ 総論
最後にこれまでのデータを基に簡単にまとめたいと思います
① 今後も死亡者数は増加していきます。それに加え都市部への人口流出やそれに伴う「墓じまい」の影響により以前建立したお墓に納骨される方も減少する為、新たに必要とされる納骨場所(一般的な墓石・納骨堂等なども含む)の総数は以前の予想よりも更に増加していると思われます。
② ただし、ここ数年の日本の石材製品は輸入量、輸入金額共に減少し続けています。
③ これは、消費者のニーズである、敷地面積の小型化、和型よりは洋型、購入金額の低下が影響していると思われます。さらに、近年は樹木葬や納骨堂に相当数流れているのに加え、今年に入り市町村が極端な安価にて納骨堂の提供を始めるなど、墓石業界に関しては以前の予想を大幅に上回りシェアを落としているのも事実です。さらに、ここ数年発生した「墓じまい」という言葉により、一般顧客の「墓離れ」も加速度的に進んでいるように感じられます。
④ 小売店の売上は上記の状況程には減少していない傾向も見られますが、やはり新規の墓石建立数は減少し、リフォームや解体の売り上げに占める割合が増加しています。個々の小売店はそれぞれ企業努力により新しい売上の確保に努めているのが現状です。
そこで我々業界としては、お墓は今も主流ではあるものの、すでに埋葬方法の選択肢の一つである事を謙虚に現状と受け止めつつ、改めて「お墓の素晴らしさ・大切さ」「お墓参りという習慣の根差した暮らしの豊かさ」「供養の大切さ」「石の魅力・価値」を一般顧客(エンドユーザー)に理解してもらえる様に努めて行く事が急務であると考えています。
ご清聴ありがとうございました。